chapter 40~ chapter 40 “食事” ~ 一緒に暮らし始めてから母は毎朝、ご飯を作ってくれていた。 今まで朝ご飯を食べる習慣がなかったので、食べている時間分も寝ていたかったのに 要らないと言っても毎朝必ず「少しでもいいから食べろ」と起こされた。 最初はそれがめんどくさかった。うるさいとさえ思っていた。 そのうち「朝からそんなに色々食べられない」と言いつつも食べさせられているうちに ご飯よりもパン、コーヒーよりも紅茶なら口をつける私を見て 母は私の好みのものを朝食に出すようになっていった。 「時間がなくても、紅茶だけでも飲んで行きなさい」 母はコーヒー派だったけれど台所には私の為だけに紅茶が常備された。 仕事が終わって帰ると必ず「夕飯は食べたのか」と聞く。 友達と食べてくる日もあったし、買って帰る日もあったが 家に帰ると必ず聞いてくる。 「ご飯は、食べたの?」 「食べてない」と言うと必ず、何かしら作って出してくれた。 「買ってきたからいい」と言っても、お茶を入れてくれたりした。 母はとにかく食事にうるさかった。 けれど、それを恩着せがましく押し付けてくるような事はなく、 「せっかく作ったのに」などとは絶対に言わなかった。 ただ「帰らない日は何時になってもいいから連絡をしなさい」とだけ、言った。 事故にでもあったんじゃないかと心配になるから、と。 「夕飯が要るか要らないかの連絡は別にしなくてもいいわ。 あなたが食べなきゃ翌朝お母さんが食べればいい事だから。 ただ あなたがいつ帰っても食べられる用意は、いつもしてあるからね」 いつ帰っても必ず私が食べるものが用意されている、というのは次第に私に安心感を与えていった。 どんなに自由に自分勝手にしていても、帰ればそこには必ず私の為に用意されたものがある。 ここは帰ってきていい場所、居てもいい場所なのだ・・・。 そう思える事は とても嬉しい事だった。 ◆chapter 40について(日記) へ ◆chapter 41 へ |